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市内中心部の主要道路にはバス専用車線もできた。ラッシュアワーには自動車よりもかえって速い。タクシーはこの車線から締め出されたうえ、バス専用車線が最もセンターライン寄りに設けられたことから、客は少々バスが来なくてもタクシーをつかまえず我慢強くバスを待つようになったため、タクシー側では不満を持っているという。
車内は「運将」(「うんちゃん」と発音。台湾語で「運転手」)の趣味がよくわかる。このバスの運将はサボテンが趣味らしい。運転席の前には大小サボテンの鉢植えが並べてある。鉢は金属製の深めの器に入り大きな磁石でフロントにはりついている。揺れても水をやっても問題はなさそうだ。BGMは台湾とニッポンの演歌をミックスしたような独特の運将仕様が台湾語で車内に響く。ラジオのニュースやDJ番組もかかっており、にやにやして聴いている客もいる。多くは台湾語のため何を言っているのかわからないが。
車内には「腹を立てるな、わき見をするな…」と語呂良く漢文で書かれた10か条の安全運転に関する標語が貼ってあったりするが、大抵はスピード優先だ。多少乱暴だが、皆早く目的地に着きたいから文句は言わない。急停車急カーブに対する注意など当たり前のことはどこかの国のバスのようにわざわざ車内放送などしない。台北に来たばかりのころ、一部のバスでは「次の停留所は○×」「もうすぐ○×」「○×に着きました」と音声と電光掲示の案内をやっていたがしばらくしてなくなった。必要ないということらしい。
通常、乗車が前からなら料金先払いで下車は後ろから、後ろから乗車なら後払いで前から下車だが、例外もある。2区間乗るときは乗下車とも前方からで、乗車時下車時にそれぞれ12元を払う。2区間乗ったことがわからず下車時にも料金を要求された某所員は、乗車時既に払ったと習い始めたばかりの北京語に身振り手振りをまじえて反論し、結局は忙しい運将があきらめた。システムを理解していなかったとは言え、言葉がわからないと都合のよいこともある。
このバスは後方乗車だ。客はそれぞれ空席に座る。しかもできるだけ下車に便利な前方の席に。だが客が席を立ったばかりの座席ならすぐにはその席に座らない。パンパン!と座席シートを叩き、前客の尻の温もりをまずは取り去る。首尾よく座っても近くに老人や身体の不自由な人が立っているとさっと席を譲る。これは若い人も含め
 

 

 

 

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